▼国王SUNKINGさんの記事

2008年06月25日

第五章

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「 Oh,Yes. I'm Down.…」
ポールの熱唱、「I'm Down」が終わりに近づいている。

これが最後の曲だということはわかっていた。新聞やニュースでさんざん知らされていたから。ポールの汗が望遠鏡を覗いて実際に見えたものか後から見た偶像が重ね合ってしまったものなのかはもう、今では判別出来なくなってしまっている…

ギターからコードプラグを抜きながら、ジョージが手を振っている。ポールが周囲におじぎをしている。そして、4人が後ろの階段を足早におりていってしまうのははっきりと覚えている。でも、その姿が日本のファンにとってどんな意味を持つのかはわかるはずもなかった。

「あーあ、終わっちゃった。でも、今日は最後の日だよな。今日ぐらいはアンコールをやってくれたって」と、僕は座っていた。武道館いっぱいの歓声もなかなかおさまらない。みんな、願っているのだ。もう一曲を。

でも、E.H.エリックが出てきてしまった。「楽しいビートルズのコンサートは…」武道館が一斉に、そして前列の女性達が悲鳴をあげる。「いやーっ!ポール!ポーーールぅ!戻ってきてぇーーー!」五人とも泣いている。

歓声がだんだんと引いていく。事故を防ぐという理由で、暗くなることのなかった照明と、客席のないアリーナがしだいに武道館を広く感じさせていく。

「ほら、終わったよ。帰って、帰って」警官の声だ。この声に周囲を見回すと、泣きながら立てずにいる女性たち、やはり名残惜しそうに座っている同い年ぐらいの男たちを警官達が次々と立たせている。

アンコールはないんだ。僕も席を立った。待ち合わせの場所にH18は先に来ていた。「JUN」のボタンダウンに「VAN」のコットンパンツ。その頃のおしゃれのステイタスだ。「VAN」と「JUN」を順番に着る…なんて冗談があったっけ。

「アンコール、やんなかったね」「うん、最後だから、やるかもしれないと思ったんだけどね」「うん、でも、音は思ったより聞こえたよね」「前奏が聞こえた瞬間全部わかったよ。全然聞こえないなんて、ビートルズの曲を知らないやつらの苦しまぎれさ」こんなことをしゃべりながら僕らは「九段下」の駅へ向かって歩いていった。

「ほら、ほら、立ち止まらないで!」「出口はこっちだよ!」警官達の怒鳴り声がまだ聞こえる。音楽の教科書に載るなんて、30年以上たっても(しかも、余りもので)チャートのNo.1を取るなんてその当時の誰も、もちろん僕らだって、考えつく訳なんてありゃしなかった。

THE END
「B40さんのビートルズ日本公演」の記事は…大B帝国の特別客員だった「B40」さんがつづった連載コラムです。鋭い観察眼と豊かな表現力でビートルズを語ってくれました。(永久保存版)
 
posted by 国王SUNKING at 16:29 | Comment(0) | B40さんのビートルズ日本公演
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